むしめがね

生活のこと、旅のこと、人々のこと、考えたこと

お正月のはなし

 

今日は、正月の話をしようと思う。

新年の挨拶を兼ねて一年ぶりに祖父母の家を訪ねてみたら、御年87歳になられる祖父がプチ整形していた。

 

「おう、よく来たな」と笑う目に、明らかに違和感がある。光量がおかしい。尋常ではない生命力を放っているというか、簡単に言えばキラキラしているのである。動揺を隠せず俯向く私に「遠慮しないでくつろいで行きなさい」という祖父。じーさん、遠慮じゃない。怖くて目が合わせらんないんだよ。

 

普通ではない様子を心配して、祖父は私のカーディガンについた毛玉を髭剃りのような機械で優しくとってくれた。

 

猿のノミ取りのような体制でじっと祖父に任せていると祖父母と同居する従兄弟ファミリーも食卓に揃い、毎年恒例の宴会が始まった。場も温まった頃、満を持して切り込んでみた。


「おじいちゃん、その二重どうしたの」


静まる食卓。誰もが息を止め祖父の口元に注目する。
祖父はゴクリと唾を飲み、「整形した」と重々しく言い放った。
「あ、何だやっぱそうなんだ!」「あははびっくりした〜!」「言ってくれよじーさん!」とその場は温かな笑いに包まれた。


が、しかし疑問は残る。じーさん、何故87歳にもなってそんなちっちゃい整形をしたのだ。正直じーさんが普通の人間だったらどう考えても一重で生きてきた時間のほうが最終的に長くなっちゃうだろうし、今更いじったってその目を見るのは50年近く連れ添ったばーさんと同居してる従兄弟ファミリーぐらいのもんだろう。何か身辺に変化があったのだろうか。


様々な想像に心を痛めているうちに、話題は4月から社会人になる従兄弟の会社についてに変わってしまっていた。というわけで、どなたかうちの祖父に出会う機会がありましたら是非プチ整形の訳を聞いてやってください。よろしくお願いします。